暗号通貨プロジェクト「Worldcoin(ワールドコイン)」を開発した米国のテクノロジー企業「Tools for Humanity(TFH)」 は、各国で義務化が進むウェブサイトの「年齢認証」制度に対し、個人情報を保護する技術こそが安全な代替手段であると強調した。

TFHは、文書ベースの本人確認がかえってユーザーのプライバシーを危険にさらしていると指摘し、匿名で人間であることを証明できる技術「World ID(ワールドID)」を提案している。

現在、多くのデジタルプラットフォームでは、年齢認証のために運転免許証やパスポートなどの公的身分証の提出を求めている。かつては「18歳以上です」にチェックを入れるだけで済んだ認証も、今では映画予告編を視聴するためにまで身分証をアップロードしなければならないケースがある。

TFHはこうした動きに対し、「規制の強化が個人データ収集競争を生み、結果的にユーザーの安全を脅かしている」と警鐘を鳴らす。実際、政府発行の高解像度書類が流出すれば、クレジット詐欺や銀行アクセス、AIによる“合成ID”の温床になるおそれもあるという。

多くのSNSやゲーム企業は、本人確認やAI学習のためにユーザーの身分証データを中央サーバーに保存している。しかし、このデータベースはハッカーにとって格好の標的だ。たとえ「削除した」と企業が宣言しても、バックアップや外部システムに情報が残る可能性は否定できない。

TFHが開発した「World ID」は、こうした課題を解決する技術として注目されている。この技術は、個人情報を一切共有することなく、ユーザーが年齢や「人間であること」を暗号的に証明できる仕組みを採用している。従来のように名前や住所、生年月日をプラットフォームに提供する必要はなく、アプリやサイト側が受け取るのは「年齢要件を満たしている」という暗号化された“イエス”または“ノー”の信号だけだ。

TFHはこのシステムに「ゼロ知識証明(Zero-knowledge proof)」という暗号技術を導入。これにより、ユーザーのデータは端末の外に出ることなく、第三者と共有されることもない。すべての認証はユーザーのデバイス上で完結し、外部には匿名性を保った数学的証明のみが送信される。

この技術はすでにグローバルなデーティングアプリを運営する「Match Group」で採用が進んでおり、ユーザーは身分証を提出せずに成人であることを証明できる。未成年者のアクセスを防ぐと同時に、偽アカウントやボットの排除にも効果を発揮するという。ゲーム企業やSNS、コンテンツプラットフォームなどでも導入が検討されており、個人情報を収集せずに法的規制を満たす新しい選択肢として注目されている。

TFHの韓国支社代表・朴尚旭(パク・サンウク)氏は、「未成年者保護のための年齢認証制度が、本来の目的とは裏腹に利用者の個人情報を過剰に要求している」と指摘。「これからの技術の鍵は“どれだけ多く集めるか”ではなく、“どれだけ少なくしても信頼を保てるか”だ」と述べた。さらに「World IDは、氏名や生年月日を明かすことなく個人の年齢と“人間性”を証明できる、新しい認証パラダイムを提示するものだ」と強調した。
2025/11/07 11:48
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