ブテリン、サム・アルトマンの「ワールド」デジタルIDプロジェクトに懸念…「オンライン仮名性の脅威」

イーサリアムの共同創業者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)がデジタルアイデンティティ(ID)プロジェクトについて公に懸念を表明した。

イーサリアムの創設者はサム・アルトマンが率いるWorld(旧ワールドコイン)プロジェクトのように「1人当たり1つのID」を目指すモデルが仮名性を弱体化させる可能性があると警告した。

ブテリンは先月28日のブログ記事を通じて、ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proofs,ZKPs)を活用したデジタル身元システムの長所と短所を分析し、「たとえZKで包まれたIDであっても、すべてのオンライン活動が単一の公開身元の下で帰属される結果を招く可能性がある」と指摘した。

彼は「ドローンの脅威など、世界がますます危険になっている中で、人々が自分自身を保護できる仮名性のオプションを奪うことは明らかな欠点だ」と強調した。

ワールドは、サム・アルトマンとアレックス・ブラニア(Alex Blania)が共同創業したツールズ・フォー・ヒューマニティ(Tools for Humanity)が開発したデジタルIDプロジェクトで、ユーザーが瞳孔スキャンを通じて人間であることを認証すると、ワールドIDとWLDトークンボーナスを提供する仕組みだ。生体情報はゼロ知識証明(ZK wrapping)で保護されると主張しており、ユーザーの実際の身元を明らかにすることなく「人間である」ことを証明できるメリットがある。

しかし、ブテリン氏は、このようなZKベースのデジタルIDシステムは、実際には匿名性維持に限界がある可能性があると警告した。仮名性を正しく享受するためには複数の電子メールアカウント、ソーシャルメディアアカウントなどを管理することができなければならないが、「1人1ID」システムが普遍化すれば、人々がたった一つのオンラインアイデンティティしか持てなくなる可能性があるということだ。

彼は「このようなシステムが導入されると、ソーシャルメディアアプリは各ユーザーにアプリ別IDを一つだけ付与することになり、結果的にグーグルアカウントのように5つ程度のアカウントを作ることができる“弱いIDシステム”とは異なり、強制的な単一アイデンティティ体系として機能する危険性がある」と説明した。